20年前のシニア像
今からわずか20年前、シニアは社会のマイノリティだった。20代だった私も、シニアというのは人生の役割を終え、世の片隅でひっそりと暮らす人たちというイメージを頭の片隅に持っていた。
今20代の息子はどんな印象を持っているんだろう。今度聞いてみたい。
(「今は若者こそがマイノリティ」とか言われたら辛いな)。
社会人になって初めて務めた外資の会社を退職し(正確には911テロで会社が潰れ)、求職者給付を貰いながら通ったITの専門学校で、Tさんという人と知り合った。当時耳慣れない「シニアのためのマーケティング」の本を上梓した直後の人で、長く務めた外資製薬会社のマーケティング職を早期退職し、退職金でシニアだけをターゲットにしたSNS(当時はWEBコミュニティとかいう言葉を使った)を新規ビジネスとして始めたいという。確かTさん当時45歳。
その話に乗って、シニア(50歳以上限定)が気軽に集えるWEBの場づくりにWEB運営担当として参加したのは確か25歳。ネット環境はようやくISDNが普及し、ADSLが注目されはじめた頃だった。
Tさんの提言は、
「スーパー等で配られるアンケートはがきを見てください。”あなたの年齢は?”という属性項目が、10代、20代、30代、40代で終わっています。それ以上の年齢は”50代以上”と一括りにされている!シニア向けの商品やサービスの開発をこの国がいかにおろそかにしているか。」
というものだった。
当時、(今もかもしれないけど)この国の個人資産の9割は60代以上の人が所有していると言われていたから、彼らが喜んで出費をしたくなるような商品やサービスを開発することが、シニアの幸せにも、この国の経済にも貢献すること、ひいては全世代に貢献することになるのだというのが、新規事業の目指すところだった。
時おなじくして、電通が「シニア大航海プロジェクト」という、やはりシニア向けのマーケット開発のための活動を推進しはじめていた。テレビCMや雑誌などにシニアのビジュアルが頻繁に登場し始めた。
私たちが運営するシニア向けのコミュニティサイトのコンテンツテーマは、旅行やガーデニング、食品等。あと、当時のシニアがこぞってはまっていたのはデジカメ。メルマガもずいぶん書いた。こういう消費財に対する会員向けのアンケート調査等をして事業会社に販売する。これはTさんの得意領域だったから、事業は割と順調に進んだ記憶がある。
でも実は、デジカメに次いで会員の反応がよかったのは実は「ボランティア」のコンテンツだった。消費するだけの人ではなく、誰かの役に立ちたい、そういう思いをつづる人が多くて、若いながら共感した私も「ボランティア」コンテンツに入り浸った。お金にならないコンテンツばかり拡充するのはどうか、と当時社内では言われたけど。
それから20年たち、気が付けば当時のTさんと私は同い年だ。転職を経て、今の会社でもシニアをテーマにした講習企画を何度かやってきた。「シニアのキャリア」とか「ライフプラン」「マネープラン」を扱うけれど、その根本のところは、20年前に運営していたWEBサイトと変わらないのだな、ということに最近気づいた。
今日のばんごはん:
イカバターとジャガイモ炒め
ブロッコリーとスパムの炒め物
金華サバの塩焼き
肉豆腐とネギの煮物